はじめに
もう10年以上前の話ですが、2012年12月、レベルファイブがセガの特許を侵害したとして訴訟が起こっていることが明らかになりました。当時は読売新聞をはじめとしてメディア報道もされましたが、その後の報道は特になく、ネット記事もありません。そこで筆者は2023年から2024年にかけて、東京地方裁判所での調査や有価証券報告書の精査などを行い、現時点で知りうる情報を幅広くまとめることにしました。長くなりますが、興味のある方はぜひ最後まで読んでみてください。
問題となった特許
問題となったセガの特許については4Gamerが考察しています。
昨日の報道では「2件」の特許に抵触しているというだけで,具体的にどの特許項目の侵害とされたのかについては判然としなかったのだが,今回の発表によって2009年2月20日および2011年8月26日に成立した特許,具体的には,特願2004-381199,特願2008-275989の「画像処理装置およびその方法」であることがほぼ明らかになった。
レベルファイブ,セガとの特許問題についての公式見解を発表 (4gamer.net)
特願2004-381199、特願2008-275989はそれぞれ登録番号4258850、4807531です。いずれの特許についてもレベルファイブが無効審判を起こしていた(後述)ことから、やはりこの特許で間違いなさそうです。
セガが起こした特許侵害訴訟の経緯と結果
2012年12月11日、読売新聞はセガがレベルファイブに対して訴訟を起こしたことを報じました。
ニンテンドーDSのゲームソフトに採用されている技術の特許を侵害されたとして、ゲームソフト大手「セガ」(東京都)がソフト開発会社「レベルファイブ」(福岡市)を相手取り、同社の人気サッカーゲーム「イナズマイレブン」シリーズ8作品の販売差し止めと廃棄や約9億円の損害賠償などを求める訴訟を東京地裁に起こしたことがわかった。
7日に第1回口頭弁論が開かれ、レベルファイブ側は争う姿勢を示した。
イナズマイレブン巡り…セガ、ゲーム特許で提訴 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞) (archive.org)
その翌日である2012年12月12日、レベルファイブは「当社に対する訴訟提起について」というタイトルで訴訟に対する見解を表明しました。このプレスリリースは現在削除されていますが、インターネットアーカイブに情報が残っています。
各種報道のとおり、2012年10月22日に株式会社セガ(以下「セガ」といいます)より特許権侵害に関する訴訟の提起を受けましたのでお知らせ致します。
当社に対する訴訟提起について (archive.org)
なお、ねとらぼの取材によれば、セガはレベルファイブに対して2011年10月から交渉を続けていましたが、合意に至らなかったため提訴に踏み切ったということです。
今回争点になるのはセガが持つ「タッチパネルの移動」などの特許について。キャラクターを移動させる際の演出や処理が酷似しているとして、セガはレベルファイブに対して昨年10月から9カ月にわたり交渉を続けていた。結局合意には至らず、10月22日に提訴へ踏み切った。損害賠償についてはシリーズの販売実績から換算し、得られるはずだった特許使用料とのこと。
「イナズマイレブン」が特許侵害? セガ、東京地裁にレベルファイブを提訴 – ねとらぼ (itmedia.co.jp)
以上をまとめると、2011年10月から始まった交渉が合意に至らなかったため2012年10月22日に訴訟が提起され、2012年12月7日に第1回口頭弁論が開かれたようです。しかし、この後新たな報道やプレスリリースが出ることはありませんでした。
そこで筆者は2023年、東京地方裁判所でレベルファイブとセガの裁判記録の閲覧申請を行おうとしました。しかし、民事訟廷記録係の閲覧謄写室を訪ねると、職員の方からこの裁判は訴訟の「取り下げ」により終了したため、閲覧できる資料は残っていないと言われました。通常裁判記録は訴訟終結から5年経過で廃棄されてしまうのです。つまり、この訴訟は5年を超えて資料が残る判決や裁判上の和解には至っておらず、遅くとも2018年には取り下げられていたと考えられます。しかし、実際にはそれより早く終了していた可能性が高いです。理由は後ほど解説します。
レベルファイブが起こした特許無効審判の経緯と結果
特許庁が提供する特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」では、出願された特許の内容に加えて、請求された審判情報を確認することができます。登録番号4258850、4807531で検索をかけてみると、それぞれ2件、計4件の審判情報がヒットします。審判番号は登録番号4258850に対しては無効2013-800123と無効2014-800113、登録番号4807531に対しては無効2013-800124と無効2014-800114です。「無効」という表記からもわかる通りいずれの審判も特許の無効を求めたもので、請求人がレベルファイブ、被請求人がセガとなります。この内無効2013-800123と無効2013-800124は2013年7月16日、無効2014-800113と無効2014-800114は2014年7月2日に請求されていたことが確認できます。
まずは2013年7月16日に請求された2つの審判から確認していきます。J-PlatPatで審判情報を読み進めていくと、審判はこのような経緯で進んでいたことがわかりました。
2013年7月16日 | レベルファイブが特許無効審判を請求 |
2013年10月7日 | セガが審判事件答弁書を提出 |
2013年12月24日 | レベルファイブが上申書を提出 |
2014年2月3日 | レベルファイブが口頭審理陳述要領書を提出 |
2014年2月4日 | セガが口頭審理陳述要領書を提出 |
2014年2月17日 | レベルファイブが上申書を提出 |
2014年2月18日 | 口頭審理 |
2014年3月3日 | レベルファイブが上申書を提出 |
2014年3月18日 | セガが上申書を提出 |
2014年10月22日 | 審決「特許を無効とすることができない」 |
2014年11月27日 | レベルファイブが審決取消訴訟を提起 |
つまり、最終的にレベルファイブの請求は成り立たず、セガの特許は無効になりませんでした。さらに審判費用はレベルファイブの負担となっています。また、この後レベルファイブは審決を不服として2014年11月27日に審決取消訴訟を知的財産高等裁判所に起こしていました。事件番号は登録番号4258850、4807531に対してそれぞれ平26行ケ10260、平26行ケ10261です。
2016年以降、知的財産高等裁判所は審決取消訴訟の結果及び係属中の事件一覧をExcelファイルとして公表しています。
ここには直近3年間のデータしか掲載されていませんが、インターネットアーカイブには2016年5月時点のExcelファイルが残っています。
しかし、平26行ケ10260、平26行ケ10261については係属中事件一覧にも終局事件一覧にも掲載されていませんでした。終局事件一覧には2016年1月6日以降の情報が掲載されていることから、審決取消訴訟は2015年12月以前に終了していたと考えられます。また、Excelファイルを見てもわかるように、審決取消訴訟は基本的に「判決」または「訴え取下げ」により終了します。「判決」が出た場合は、以下の記載にある通り裁判例検索データベース上に掲載されるはずですが、平26行ケ10260、平26行ケ10261はいずれも掲載されていないことから、「訴え取下げ」により終了したものと推測されます。
裁判例検索データベースには,平成17年4月1日に知財高裁が設立されてからの判決(侵害訴訟と審決取消訴訟)のほぼ全件と,決定その他の一部が掲載されています(平成17年3月以前の東京高裁判決も一部掲載)。
検索ページ | 知的財産高等裁判所 – Intellectual Property High Courts
話を特許無効審判に戻し、2014年7月2日に請求された2つの審判についても触れておきます。1度目の無効審判が審決する前に請求されたものですが、こちらについては2015年5月15日までに取り下げられていたことがJ-PlatPat上で確認できます。審決に至っていないためこの間どのような手続きがあったのかは不明ですが、この時期に一連の問題が何らかの形で終結していた可能性が考えられます。なお、この審判では被請求人がセガではなくセガゲームスとなっていますが、これはおそらく2015年4月1日にセガグールプ内の組織再編で社名が変わったことによるものです。
和解金等の支払いはあったのか?
セガはセガサミーホールディングスの連結子会社です。セガサミーホールディングスは上場しており連結決算を開示しているため、セガの業績を含んだ四半期ごとの財務諸表を確認することができます。なお、ここから財務諸表の一部を引用・考察した情報を記載しますが、投資の勧誘や推奨を目的としたものではありません。当記事の情報を見て投資判断をする場合には自己責任でお願いします。
既に述べた通り裁判上の和解にはおそらく至っていませんが、裁判外の和解に至っていた場合で、もしレベルファイブから多額の和解金等が支払われていれば、セガサミーホールディングスの連結損益計算書の中にその金額が記載されているかもしれません。そこで2013年3月期から2019年3月期までの連結損益計算書を確認してみましたが、訴訟関連収入、受取和解金、受取解決金など、明らかにレベルファイブから受け取ってそうな勘定科目は見つかりませんでした。ただし和解金等が少額であった場合は「その他」に含まれている可能性もあります。そこで、この期間中で有価証券報告書の連結損益及び包括利益計算書において営業外収益または特別利益にその他として計上された金額のみをピックアップしてみます。
(百万円) | ||
2013年3月期 | 営業外収益 | 730 |
特別利益 | 1227 | |
2014年3月期 | 営業外収益 | 953 |
特別利益 | 217 | |
2015年3月期 | 営業外収益 | 896 |
特別利益 | 61 | |
2016年3月期 | 営業外収益 | 1362 |
特別利益 | 244 | |
2017年3月期 | 営業外収益 | 1344 |
特別利益 | 1148 | |
2018年3月期 | 営業外収益 | 1008 |
特別利益 | 22 | |
2019年3月期 | 営業外収益 | 872 |
特別利益 | 18 |
レベルファイブによる2度目の特許無効審判が取り下げにより終了した2015年5月を含む2016年3月期に着目してみると、この期間で最も大きな営業外収益その他が計上されています。一方特別利益その他は変動が激しく、特段の特徴は掴めません。
次に四半期ごとの営業外収益・特別利益の累計合計額と、各四半期単体でその他として計上された値、子会社であるセガ単体の通期損益計算書でその他として計上された値を見てみます。セガサミーホールディングスの四半期単体その他については四半期末ごとに計上された値同士で引き算をしているため、勘定科目の追加によりQonQでマイナスになることもある他、端数の取り扱いにより数字に多少の誤差が含まれている可能性があります。また、合計額を見る理由は、連結財務諸表規則57条・62条により「その他」に含められるのは合計額の10%以下の項目、四半期連結財務諸表規則71条・74条により四半期連結損益計算書で「その他」に含められるのは合計額の20%以下の項目に限られるからです。つまり、考えうる最大の和解金等は、セガサミーホールディングスでその他として計上できる限度(通期合計額の10%かつ四半期合計の20%)以下かつセガサミーホールディングスの各四半期単体でその他に計上された金額以下かつセガ単体の通期決算でその他として計上された金額以下である必要があります。なお、ここからの考察は和解金のようなものがあったとしてもそれは一括で計上されていたと仮定しています。
セガ(2016年3月期以降はセガゲームス)の決算公告についてはこちらで確認することができます。やはり訴訟関連収入、受取和解金、受取解決金などの科目は見つかりません。
まずは営業外収益その他から見ていきましょう。
セガサミー累計合計額(百万円) | その他に計上できる限度(百万円) | セガサミー四半期単体その他(百万円) | セガ単体通期その他(百万円) | 左3列の最小値(百万円) | 備考 | ||
2013年3月期 | 1Q | 837 | 167.4 | 166 | 316 | 166 | |
2Q | 1281 | 256.2 | 312 | 316 | 256.2 | ||
3Q | 3101 | 450.9 | 136 | 316 | 136 | ||
4Q | 4509 | 450.9 | 116 | 316 | 116 | 勘定科目追加 (リース資産運用収入67) | |
2014年3月期 | 1Q | 1552 | 310.4 | 210 | 145 | 145 | |
2Q | 2944 | 480.2 | 309 | 145 | 145 | ||
3Q | 4097 | 480.2 | 231 | 145 | 145 | ||
4Q | 4802 | 480.2 | 203 | 145 | 145 | ||
2015年3月期 | 1Q | 1120 | 224 | 319 | 425 | 224 | |
2Q | 1430 | 282.5 | 134 | 425 | 134 | ||
3Q | 2142 | 282.5 | 129 | 425 | 129 | ||
4Q | 2825 | 282.5 | 314 | 425 | 282.5 | 勘定科目追加 (償却債権取立益300) | |
2016年3月期 | 1Q | 1402 | 280.4 | 682 | 309 | 280.4 | |
2Q | 1769 | 319 | 177 | 309 | 177 | ||
3Q | 2741 | 319 | 321 | 309 | 309 | ||
4Q | 3190 | 319 | 182 | 309 | 182 | 勘定科目追加 (償却債権取立益159) | |
2017年3月期 | 1Q | 1244 | 248.8 | 255 | 182 | 182 | |
2Q | 2185 | 388.6 | 528 | 182 | 182 | ||
3Q | 3352 | 388.6 | 233 | 182 | 182 | ||
4Q | 3886 | 388.6 | 329 | 182 | 182 | ||
2018年3月期 | 1Q | 1192 | 238.4 | 386 | 131 | 131 | |
2Q | 1808 | 326.2 | 201 | 131 | 131 | ||
3Q | 3149 | 326.2 | 173 | 131 | 131 | ||
4Q | 3262 | 326.2 | 248 | 131 | 131 | ||
2019年3月期 | 1Q | 747 | 149.4 | 155 | 40 | 40 | |
2Q | 1322 | 211.7 | 113 | 40 | 40 | ||
3Q | 1597 | 211.7 | 164 | 40 | 40 | ||
4Q | 2117 | 211.7 | 440 | 40 | 40 |
2015年4~6月(2016年3月期1Q)、ちょうどレベルファイブによる2度目の特許無効審判が取り下げられた時期に、期間中で最も大きな営業外収益その他を記録しています。他の四半期単体より4億円程度大きな値です。しかしこの4億が全てレベルファイブによるものと考えることはできません。なぜなら四半期連結損益計算書で「その他」に含められるのは14.02億円の20%で2.804億円以下の項目に限られるからです。そのような観点で右から2列目を眺めていくと、最大値は2016年3月期3Qの3.09億円です。つまり、和解金のようなものが一括で支払われていて、かつそれが営業外収益として計上されていた場合、その額は最大で3億円前後に上っていた可能性があります。あくまでも仮定で、考えうる最大の可能性を示したものです。
続いて特別利益その他です。
セガサミー累計合計額(百万円) | その他に計上できる限度(百万円) | セガサミー四半期単体その他(百万円) | セガ単体通期その他(百万円) | 左3列の最小値(百万円) | 備考 | ||
2013年3月期 | 1Q | 306 | 61.2 | 16 | 392 | 16 | |
2Q | 356 | 71.2 | 1 | 392 | 1 | ||
3Q | 2287 | 457.4 | 37 | 392 | 37 | 勘定科目追加(投資有価証券売却益1891) | |
4Q | 10179 | 1017.9 | 1173 | 392 | 392 | 勘定科目追加(厚生年金基金代行返上益6345他) | |
2014年3月期 | 1Q | 3331 | 666.2 | 0 | 104 | 0 | |
2Q | 3834 | 766.8 | 2 | 104 | 2 | 勘定科目追加(新株予約権戻入益0) | |
3Q | 15564 | 1579.5 | 15 | 104 | 15 | ||
4Q | 15795 | 1579.5 | 200 | 104 | 104 | 勘定科目追加(固定資産売却益3585) | |
2015年3月期 | 1Q | 158 | 31.6 | 30 | 7 | 7 | |
2Q | 329 | 65.8 | 3 | 7 | 3 | 勘定科目追加(新株予約権戻入益105) | |
3Q | 899 | 101.3 | 182 | 7 | 7 | 勘定科目追加(収用補償金277) | |
4Q | 1013 | 101.3 | -154 | 7 | -154 | 勘定科目追加(関係会社株式売却益175) | |
2016年3月期 | 1Q | 351 | 70.2 | 51 | 176 | 51 | |
2Q | 505 | 101 | 96 | 176 | 96 | 勘定科目追加(新株予約権戻入益8) | |
3Q | 1094 | 129.7 | -10 | 176 | -10 | 勘定科目追加(解体費用引当金戻入益521) | |
4Q | 1297 | 129.7 | 107 | 176 | 107 | 勘定科目追加(関係会社株式売却益16) | |
2017年3月期 | 1Q | 1542 | 308.4 | 49 | 141 | 49 | |
2Q | 11994 | 1331.9 | -2 | 141 | -2 | 勘定科目追加(新株予約権戻入益801) | |
3Q | 12875 | 1331.9 | -6 | 141 | -6 | 勘定科目追加(解体費用引当金戻入益5) | |
4Q | 13319 | 1331.9 | 1107 | 141 | 141 | 1Qの匿名組合清算益1087がその他へ | |
2018年3月期 | 1Q | 557 | 97.7 | 0 | 124 | 0 | |
2Q | 859 | 97.7 | 124 | 124 | 97.7 | 1Qの事業再編損戻入益124がその他へ | |
3Q | 868 | 97.7 | 4 | 124 | 4 | ||
4Q | 977 | 97.7 | -106 | 124 | -106 | 勘定科目追加(事業再編損戻入益124) | |
2019年3月期 | 1Q | 83 | 16.6 | 5 | 0 | 0 | |
2Q | 1775 | 355 | 5 | 0 | 0 | 勘定科目追加(関係会社清算益1220) | |
3Q | 1784 | 356.8 | 8 | 0 | 0 | ||
4Q | 8230 | 823 | 5 | 0 | 0 | 勘定科目追加(事業再編損戻入益64) |
2013年3月期や2014年3月期に大きな値がありますが、審決取消訴訟の提起前なのでレベルファイブによるものではないでしょう。とすると、仮に和解金のようなものがレベルファイブから一括で支払われていた場合、それが特別利益として計上されているのであれば最大で2017年1~3月(2017年3月期4Q)の1.41億円に上っていた可能性があります。次いで多いのが2016年1~3月の1.07億円です。なお、2度目の特許無効審判が取り下げられた2015年4~6月には5100万円が計上されています。
以上をまとめると、仮にレベルファイブから和解金のようなものが一括で支払われていた場合、それが営業外収益として計上された場合には最大で3億円前後、特別利益として計上された場合には最大で1億円前後に上っていた可能性があります。もし2015年4~6月に支払われていた場合は、営業外収益で最大3億円前後、特別利益で最大0.5億円前後です。繰り返しますが、あくまでも仮定の話で、考えうる最大の可能性を示したものです。少なくとも言えるのは、当初セガが求めていた約9億円の支払いには至っていない可能性が高いということくらいです。特許無効審判の審判費用を除き、金銭的なやりとりが無かった可能性ももちろんあります。ちなみに損益計算書に加え四半期ごとの連結キャッシュフロー計算書にも一通り目を通してみましたが、それらしき科目は見つかりませんでした。もちろんこれに関しても少額であればその他に入っている可能性はあります。
この問題が終結したと考えられる時期は妖怪ウォッチブームの真っ只中またはその直後です。レベルファイブの資金力が間違いなく強かった時期でしょうし、3億円(?)を出して一気に問題を解決させた可能性も否定できません。あるいはレベルファイブの影響力が増大したことで、逆にセガ側が事業への悪影響を恐れて無条件に訴訟を取り下げたというような想像をすることもできるかもしれません。2015年4月のセガグールプ内組織再編がきっかけとなった可能性もあります。
なお、セガは当初イナズマイレブンシリーズの販売停止を求めていましたが、事実としてイナズマイレブンシリーズのダウンロード版はニンテンドーeショップのサービス終了まで販売され続け、セールまで行われていたので、少なくともこの点ではセガの要求は通っていません。
また、今度の新作「英雄たちのヴィクトリーロード」でもタッチ操作は健在のようです。
まとめ
まとめです。まず事実を整理します。時系列でまとめるとこのようになります。
2011年10月 | セガがレベルファイブに対して交渉開始 |
2012年10月22日 | 交渉決裂、セガがレベルファイブに対して特許侵害訴訟を提起 |
2012年12月7日 | 第1回口頭弁論(侵害訴訟)→読売新聞報道 |
2013年7月16日 | レベルファイブが1度目の特許無効審判を請求 |
2014年2月18日 | 口頭審理(無効審判) |
2014年7月2日 | レベルファイブが2度目の特許無効審判を請求 |
2014年10月22日 | 1度目の特許無効審判が審決「特許を無効とすることができない」 審判費用はレベルファイブ負担 |
2014年11月27日 | レベルファイブが審決取消訴訟を提起 |
2015年5月15日 | レベルファイブが2度目の特許無効審判を取り下げ |
2014年~2015年頃 | レベルファイブによる審決取消訴訟が終了 (取り下げによるものと推測) |
2012年~2018年頃 | セガが特許侵害訴訟を取り下げ |
この間イナズマイレブンシリーズの販売は継続 |
最後に考察です。レベルファイブが2度目の特許無効審判が取り下げにより終了したのが2015年5月15日であり、2014年11月27日に提起された審決取消訴訟が2015年末までにおそらく取り下げられていたことから、2015年頃にこの問題が解決した可能性が高いと考えます。侵害訴訟もこの時期に取り下げられたのではないでしょうか。いくつかの訴訟や審判がありましたが、いずれも双方取り下げにより終了していると考えられることから、両社が(少なくとも表面上では)納得のいく形に持ち込むことができたのだと思います。これを受けて翌年のレベルファイブビジョン2016でイナズマイレブンシリーズの新作を発表することができたと考えることもできます。しかし、両社ともにプレスリリースを出していないことから、明らかに一方が勝ち、もう一方が負けたというような結果にはなっていないのではないかと個人的には推測します。
また、和解金のようなものをレベルファイブが払っていたとすると、その額は最大で3億円程度に上る可能性がありますが、当初求めていた約9億円に達していた可能性は低いと考えます。もちろん払っていない可能性もありますし、個人的にはその可能性の方が高いと考えています。なお、多分ないと思いますが複数の四半期に分割して計上されていたり、売上として計上されていたりした場合には9億円払っていた可能性も考えられます。
最後に、当記事には確認された事実とそこからの考察が混在しています。なるべく両者が区別しやすい表現にしたつもりですが、特に和解金周りの考察には信憑性が乏しいものもありますのでご注意ください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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